2026年5月26日に開幕したWSOP 2026では、
プレイヤーが担当ディーラーを星1〜5で評価できる「ディーラー評価システム」が導入されました。
導入直後から、プレイヤーの間ではこれに対する賛否の声が上がっていた一方、評価「される側」であるディーラー自身の声は、これまでほとんど表に出てきませんでした。
今回お話を伺ったのは、WSOP 2026にディーラーとして参加している日本人のななかさんです。
評価される側から見た制度の実情を語っていただきました。
今回導入された、
ディーラー評価システムとは?
まずは、今回導入されたディーラー評価システムの概要を簡単に紹介します。
【ディーラー評価システムの概要】
- 「WSOP Live」アプリから行う
- 担当ディーラーを星1〜5で評価できる
- 評価は運営以外に公開されない
- 上位3名のディーラーにボーナス
(最大約75,000円)
ブレスレットイベントごとに毎回評価がリセットされ、都度、上位3名にボーナスが支給されます。
| 順位 | 報酬額 |
|---|---|
| 1位 | 約75,000円 |
| 2位 | 約45,000円 |
| 3位 | 約30,000円 |
今シリーズの対象は100イベントにのぼり、
WSOPが用意した報酬総額は約1,500万円です。
WSOPは「優秀なディーラーを引き上げ、シリーズを通じて上達していくよう動機づけたい」と説明しており、
ディーラーの待遇向上を図る制度と受け取れます。
仕組みの詳しい解説や、導入の背景、開幕前のプロプレイヤーの賛否については、以下の記事で紹介しています。

ラスベガスの大舞台に立つ、
日本人ディーラーななかさんとは?

今回インタビューに応じてくださったのは、WSOP 2026にディーラーとして活躍している日本人のななか(@mycar_hekonda)さんです。
世界中から一流が集まるWSOPの大舞台において、優秀なディーラーを称える「DEALER RATINGS AWARDS」の受賞を果たすなど、現場で確かな信頼と実績を残されています。
彼女が執筆した「WSOPのテーブルアサイン方法とディーラーの給料システム」に関するnoteは、ラスベガスのリアルな内情が知れるコンテンツとして、日本のポーカーファンの間でも大きな注目を集めました。
そんな現役ディーラーの視点を持つななかさんは、今シリーズから導入され、プレイヤー側で大きな話題を呼んでいる「ディーラー評価システム」をどう受け止めているのでしょうか。
評価される当事者、そして最前線に立つ彼女に、制度に対する率直な「本音」から詳しく伺っていきます。
「自分の評価は見られない」
評価される側の率直な本音
まず、評価システムについて率直にどう感じていますか?

やはり、自分がどんな評価をされているのかは気になります。

ディーラー側からは評価を確認できない仕組みなので、「自分の評価が分からないなら微妙では?」というのが正直な感想です。
評価は運営内部でのみ共有され、
ディーラー本人にも開示されないんですね。
周りのディーラーの方々も同じ感覚ですか?

そうですね。
私も含めて、周りは「自分の評価を見たい」と話しています(笑)
開幕前には、プレイヤー側から「経験の浅いディーラーへの心理的負担になるのでは」と懸念する声もありました。
評価されることへのプレッシャーはありますか?

特にないですね。
結果が見えないので、良くも悪くも実感がない、というのが近いと思います。
プレッシャーというより、評価が返ってこない手応えのなさの方が話題になっている感じです。
ボーナス制度は、
現場のモチベーションになっている?
各ブレスレットイベントの上位3名に最大約75,000円のボーナスが出るそうですが、ディーラーの皆さんの反応はどうですか?

「報酬がもらえるから頑張ろう」という雰囲気には、正直なっていないですね。
周りのディーラーと話しても、
「微妙そうだよね」という結論に落ち着きました。
その「微妙」という現場の感覚を紐解くために、まずはベースとなる普段の時給がどのくらいなのか教えていただけますか?

時給は担当できるゲームで変わります。
ホールデムが6,800円、
ミックスなら8,500円です。
| 担当区分 | 時給 |
|---|---|
| ホールデム | 約6,800円 |
| ミックスゲーム | 約8,500円 |
ホールデム担当が1日10時間勤務すると日給約68,000円ですから、1位の75,000円は約1日分の給与に相当しますね。
決して小さい額ではないように見えますが、いかがでしょう?

金額自体は小さくないんです。
ただ、多くのディーラーがいる中で、各イベントで上位3名に入らないといけないので。
「現実的に狙えるもの」とは思われていない感じですね。
評価がブレスレットイベントごとにリセットされる仕組みについては、
ディーラー側から見てどうですか?

ランキングはイベントごとの評価で決まるので、ミックスゲームが苦手でも、ホールデムのディーリングが上手ければボーナスを獲得できるチャンスはあります。
そこは前向きに捉えられる部分だと思います。
評価の集まり方についてはいかがですか?

ディーラーは30分交代で、
プレイヤーが評価できるのはその担当時間中だけなんです。
卓を離れる前に「よかったら評価してくださいね」と声をかけても、
「どうやって評価すればいいの?」と、そもそも評価方法を知らないプレイヤーの方が多かったですね。
プレイヤー側で「そもそも評価方法が分からない」という人が多かったのは、導入されたばかりの新制度ならではの現状と言えそうです。
いかにプレイヤーに評価の仕組みを認知してもらうかは、今後の大きな課題のようですね。
優秀な証?「グリーンタグ」の仕組み

取材の中で何度か「タグ」という言葉が出てきました。
ディーラーにはタグによる区分があるのでしょうか?

グリーンタグは、一部の優秀なディーラーに付けられているようです。
それ以外のディーラーは、
出勤時間などでタグが決まっているようですね。
現場の感覚としては
「グリーンか、そうでないか」
という区分です。

実際の「タグ」
タグの違いによって、何が変わるのですか?

グリーンタグを持つディーラーはDay2以降を優先的に担当するため、持っていなかった私はDay1を担当することが多かったです。
それでもランキングに複数入賞できたので、タグの有無だけでボーナス争いの有利不利が決まるわけではなさそうです。
グリーンタグがなくても高評価を獲得し、ランキングに複数回入賞できたという事実は、タグだけで評価が決まるわけではないことを示しているように見えます。
少なくとも、プレイヤーからの評価が結果に反映される余地はあると言えそうです。
評価は卓のアサインに影響する?
評価が低いディーラーへの指導や、
運営からのフィードバックはありますか?

運営から数値としてのフィードバックは特にないのですが、実は「評価が低いディーラーはトーナメントを外される」というペナルティがあります。
外された後はどうなるのですか?

ディーラー控え室にポーカーテーブルが置かれた場所があり、そこには専任の講師が待機しています。
トナメを外されたディーラーはそこへ送られ、講師による再トレーニングを受けることになるんです。
そして、その講師が許可を出すまでは、再びトーナメントの卓でディールすることはできない仕組みになっています。
なるほど……。
単に「良い卓に配置されにくくなる」といったのではなく、強制的な「再教育と合格」のプロセスを踏まないと復帰できない、かなり厳格なシステムなんですね。

そうなんです。
ですから、評価が低いディーラーは自動的にトナメから弾かれますし、逆にグリーンタグ(一部の優秀なディーラーに配られるタグ)を持っていなくても、評価が高ければハイローラーなどの注目卓にアサインされる、という形で「評価」が配置に直結していると思います。

実は、私も今回のシリーズ中にハイローラーの卓にアサインされたことがあるのですが、当時はたまたまかと思っていました。
ですがこのシステムの全貌を知ると、あれは偶然ではなく、プレイヤーからの評価が反映された結果だったんだなと、今になって実感しています。
「DEALER RATINGS AWARDS」の存在と評価
「ボーナスは現実的に狙えない」というお話がありましたが、現地では各イベントの優秀ディーラーを称える「WSOP DEALER RATINGS AWARDS」のリストが実際に張り出されている(または配布されている)という情報が入ってきました。

はい、それは事実です。
ブレスレットイベントごとに、プレイヤーからの評価が高かった受賞者が公式に発表されています。
このアワードの発表を受けて、現場のディーラーたちの受け止め方は変わってきそうでしょうか?

確かに「しっかりシステムが動いていて、実際に選出されているんだ」という空気は、この発表によって出てきていると思います。
評価システムを支える
「卓上タブレット」の裏側
最後に、評価がどのような仕組みで行われているのか伺えますか?

シリーズ開幕前にオリエンテーションがあり、そこで渡された社員番号をもとにIDとパスワードを設定します。
各卓にはタブレットが置いてあり、ディーラーが担当に入るときにそのIDでログインすると、その卓のプレイヤーのWSOP Liveアプリにディーラーの名前が表示されます。
その後、プレイヤーが星1〜5で評価できるようになる仕組みです。
タブレットは評価専用なのでしょうか?

いえ、よく使うのはプレイヤーの管理ですね。
プレイヤーが卓にアサインされるとタブレットに名前が表示されるので、その情報をもとにチェックインしてスタックを渡します。
プレイヤーが敗退したときは、
タブレットから敗退申請を出して、フロアが承認する流れです。
評価機能は単体の仕組みではなく、チェックインや敗退処理といった卓の運営フロー全体を支えるシステムの一部なんですね。
本日はありがとうございました。
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評価「される側」から見えた制度の今
今回の取材から見えてきたのは、以下のようなディーラー側の実情です。
【取材から見えたポイント】
- 本人には非開示で「見られないなら微妙」
- ボーナスは現場のモチベーションにならず
- 評価機会は30分間のみ、
評価方法を知らないプレイヤーも多い - グリーンタグでなくてもランキング入賞例あり
プレイヤー側からは「コメント欄がほしい」「離席後も評価したい」という改善要望が、
ディーラー側からは「自分の評価を見たい」という声が挙がっています。
立場は違っても、いずれも制度の透明性と公平性に関わる論点で重なっているといえるでしょう。
始まったばかりのディーラー評価システムは、
こうした双方の声を受けて、今後変化していく可能性があります。
WSOP 2026の開催概要や、実際のトーナメントスケジュール等の基本情報については、以下の記事で詳しく解説しています。



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