2024年11月より、ポーカー大会のルールの基盤となるTDAルールが変更となりました。
これにより大会中のオペレーションやアクションの扱いなどが変更となったのと、JOPT等のハウスルールも変更となったため、特に変更の大きいものを本記事で紹介いたします。
また、この記事はJOPTイベントディレクターの宮田達宗さんに監修いただき作成いたしました。
Poker TDAルールとは?
世界のポーカートーナメントのルールを統一化しようという枠組み。2年に1回世界中のポーカーオペレーターが集まって話し合いルールが決定される。
2024年の11月で再度話し合いが実施され、このタイミングでJOPTのハウスルールも変更となった。
【この記事の監修者:宮田達宗さん】
JOPTイベントディレクターとして各大会のトーナメントの枠組みや新しい試みにチャレンジしている。
2011年からJOPTのメンバーに加わり、1開催で100人ほどが参加する規模の大会であったJOPTを、1開催で30,000エントリー超の規模まで成長させる。
ポーカートーナメントのルール標準化を目指すTDAサミットにも出席し、ルールの日本語翻訳や普及にも取り組んでいる。
今回のTDAルール変更に伴い、JOPTによく参加するフロアを集めてミーティングを行い、話し合った内容でJOPTのハウスルールを制定しました。
JOPT主催の大会一覧
JOPT(Tokyo,Osaka,Sapporo)、Masters S-1、KKPOKER LIVE(Tokyo,Osaka)、Top of Poker Championship、戦国ポーカーツアー、SPADIE Poker League、学生ポーカー選手権U-30
スマホはテーブルに置いちゃダメ?
スマートフォン、タブレット、PCなどの電子機器に関しては「テーブル上で使用してはいけない」とTDAルールで定められました。
そのため、TDAルールではテーブルの上にスマホを置く置かない関係なくスマホが使用できないルールとなっています。
ですが、JOPTが主催している大会では少しルールが緩めになっているようです。
TDAルールではテーブル上で電子機器機は使用してはいけませんが、JOPTの大会ではハンドに参加していなければ使用可能で、画面が見えないようになっていれば常にテーブルの上に置いても構いません。
GTOツールは常に禁止!
最近ではGTO Wizardなどのポーカー解析ツールが手軽に使えるようになりましたが、そのようなポーカー解析ツールはTDAルールでは「テーブル上で使用してはいけない」という規定になりました。
もし使用したいのであればテーブルから離れて使うというのがTDAルールによるものです。
ですがJOPTが主催の大会では逆にTDAルールよりも厳しいハウスルールを採用したようです。
JOPTのハウスルールでは、“トーナメント参加中、解析ツールはいかなるときも使用してはいけない”としました。そのため、テーブルから離れていても、ブレイク中であっても、トーナメントに参加していない友人からのアドバイスでも使用してはいけません。
プレイヤーの公平性を保つためにこのような規定となりました。
こちらに関しては今まで下記のようにツールを使っていた人も多いのではないでしょうか。
- プリフロップで参加するか悩んだハンドを降りた直後にハンドレンジを解析する
- リバーで降りた難しいハンドを休憩中に解析する or 友人とツールを用いて相談する
上記に関しては今後はルール上アウトとなってしまいペナルティの対象となってしまうため注意しましょう。
ルール改定の背景となったWSOPの事件
10,000エントリー超えたWSOP2024のMain Eventで頂点に立ち約16億円を獲得したJonathan Tamayoが、トーナメント中に友人から解析ツールを用いたアドバイスを受けており、これが世界中で議論を巻き起こしました。
解析ツールを基にしたプレイングは数学的にも最適なアクションになり非常に強力です。それが16億円をかけた緊張の高まる場面となると、ツールの影響はかなり大きいでしょう。
「倫理に反する」「不公平だ」などの声があがりましたが、このときはまだツールに関するルールが特に制定されていなかったため特にペナルティ等もありませんでした。
この事件を受けてTDAルールが改正され、「解析ツールをテーブル上で使用してはならない」となったのです。
ハンドフォーハンドのタイマーが超改良!
ハンドフォーハンドとは?
入賞直前やファイナルテーブル直前に、全てのテーブルでハンド進行を揃えること。
例:残り2テーブルでAテーブルのハンドが先に終わっても次のハンドに進まず、Bテーブルのハンドが終わり次第両テーブルで次のハンドに進む。
ハンド数をこなすと飛ぶリスクが高まるため、入賞直前なのにテーブルごとにハンド数が異なると不公平&ハンド数を減らすためにアクションを極端に遅くする”牛歩戦術”を防ぐために導入された。
筆者的に超改良だと感じた変更点がこちらです。今までハンドフォーハンド時はタイマーが常に動き続けていました。
ですがこれからは1ハンドごとに減るタイマーの分数がTDAルールでは最大3分となり、JOPT主催の大会では固定で2分となりました。
ハンドフォーハンド時のタイマーはハンドの所要時間に関係なく固定で2分進めることにしました。1ハンドが2分以内で終わっても10分以上かかっても進む時間は2分です。
ハンドフォーハンドでは1ハンドの時間が”進行が一番遅かったテーブル”に合わせられるため、「ほとんどハンド数をこなせずブラインドだけが上がり、入賞した頃にはわずかなチップしかなくすぐ飛ぶ」を経験した方は多いのではないでしょうか。
ですが今後はそのような事態を防げるため、多くの方にとってかなり戦いやすくなる素晴らしい改良だと思います。
さらに、ラウンドフォーラウンドも同様に改良されたようです。
ラウンドフォーラウンドとは?
ハンドフォーハンドが1ハンドごとに進行を合わせるのに対し、ラウンドフォーラウンドはボタン1週ごとの進行を合わせること。
例:残り6テーブルのとき各テーブルボタンが1週するまでは他のテーブルを考慮せずにゲームを進める。全てのテーブルでボタンが1週したらまた全てのテーブルで同様にボタン1週まで進める。
→このとき入賞まで残り1人なのに2人以上飛んだ場合は、同じ1週で飛んだ人全員で賞金を等分する。
ラウンドフォーラウンドでは、1週ごとに減る時間は各テーブルの人数により変動します。
9,8人:1週で固定で15分進める
7,6人:1週で固定で10分進める
ハンドフォーハンドのように、「タイマーが動き続けてブラインドだけが上がる」という状態を解消できるようになりました。
また、ハンドが多くこなせるようになるので今後はラウンドフォーラウンドを多く採用する予定です。
今後ラウンドフォーラウンド中残念ながらシートオープンしてしまっても諦めず離れないでください。
ミスディール後の着席について
今まではミスディールによりリシャッフルとなった際、リシャッフル後に席に戻った場合はハンドを配り終えていなくても参加できませんでした。
しかし今回の改定により、ハンドが配り終える前に席に戻った場合はハンドに参加OKとなりました。
参加可否に関しては寛容になりました。リシャッフル後を理由にハンドをキルすることもないのでトラブルも減るでしょう。
アンティよりBBが優先に!
自分のポジションがBBでスタックが2BB以下のとき、BBとアンティの優先順位が逆転しました。それにより下記変化が起きました。
■例 ブラインド500/1,000/1,000でスタック1,200点持ち、BTNとSBとのオールインに勝利したとき
今まで:アンティに1,000点を置きBBで200点支払う。1,000+200×3=1,600点が勝利後のスタック
変更後:BBに1,000点を置きアンティで200点支払う。200+1,000×3=3,200点が勝利後のスタック
このように、2BB以下でもオールインに勝利したときにもらえるチップ量が大きく増えました。トーナメントに生き残る可能性がさらに上がる変更ですね。
今回の変更に関わった背景要因は下記です。
①以前はアンティは”ハンド参加料”という認識だったが、今ではポットに追加される“ボーナスチップ”という認識に変化した
②アンティに払われる金額よりBBに払われる金額に変動があった方がゲームの影響が大きいと判断された
これにより、BBを優先して支払った方が良いと考えられルール改定となりました。
ブレイク明けのシャッフルはどこから?
トーナメントが新たに開始したときやブレイクが開けたとき、MCによるアナウンス後のシャッフル開始段階が変更となりました。
プレイヤーにとってはハンドプレイの時間が減ってしまうことになるので嬉しくない変更ではありますが、下記のような背景があったようです。
“ゲームのスタートはリフルから”というのが元からの認識です。しかし今まではスタート箇所よりも進んだ場所から始まってしまっていたので、整えるためにリフルからとなりました。
ストリングベットの定義について
ストリングベットの定義が「プレイヤーが一度ベットしたあと再びスタックに手を伸ばし追加のチップをベットする複数の動作を伴うもの」と定義されました。
そのため、今までストリングベットと認識されていた「チップを上からバラバラとチップを落とす」や「1本のスタックを前に一度に出して一部を下げる」という動きはストリングベットとはしないということになりました。
ベットしたいチップは一度に同時に出すor発声してアクションしてください。
バウンティチップなどの扱いについて
バウンティチップやタイムバンクチップ等の額面を持たないチップに関しては、TDAルール上では各ハウスルールに委ねられました。
そのためJOPTが主催する大会ではハウスルールで「投げ入れてもアクションとみなさない」と規定したようです。
「そしたらコールしたと見せかけてバウンティチップ置けば悪さできるのでは?」と思えますが、下記返答のように悪さはできないようになっているようです。
額面を持たないチップの投入はアクションとはみなしません。ただし、それを逆手に取った紛らわしい行動は別のルールを基にペナルティを課す可能性があります。
各プレイヤーは、相手がアクションを完了したことを確認してから、自身のアクションやショーダウンをするようにしましょう。先走って行動すると、損をしてしまうことがあります。
TDAルールの変更点まとめ
今回のTDAルール変更により、大きく変わった点は下記となります。
- スマホはテーブルに置いてはいけないが、JOPTではハンド参加していなければOK
- GTOツールはハンド参加中は使用してはいけないが、JOPTではトナメ参加中は常に禁止
- ハンドフォーハンドは1ハンドごとに固定で2分進む
- ミスディール後に着席してもハンドに参加OK
- スタックが2BB以下のときアンティではなくBBを優先して置く
- ブレイク明けのシャッフルはカットではなくリフルから
- ストリングベットは「プレイヤーが一度ベットしたあと再びスタックに手を伸ばし追加のチップをベットする複数の動作を伴うもの」と定義
- 額面を持たないチップは各ハウスルールに委ねられ、JOPTでは投げ入れてもアクションとみなさない
また、本記事ではあくまで主要な変更内容のみをまとめているので、上記だけでなく全ての変更点を確認したい方は下記より公式サイトを参照ください。
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