プロに大打撃の「90%控除」ルールとは?
2025年7月、アメリカで「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」という新しい法律が可決されました。
この中に含まれるギャンブル課税の新ルールにより、アメリカ人ポーカープレイヤーにとってはブラックフライデー以来の衝撃とも言われています。
新ルールのポイントは、「損失は“勝ち分の90%までしか”控除できない」ということ。
この90%控除ルールは、特にプロにとっては致命的です。では、実際のケースで見てみましょう。
利益ゼロなのに課税される!?
たとえば、こんなケースで見てみましょう:
- トーナメントの賞金:30,000ドル
- 参加費や旅費などの経費:30,000ドル
- 利益:0(トントン)
これまでは、30,000ドルの経費がすべて控除され、利益がなければ課税対象外でした。
しかし新ルールでは、控除できるのは【経費の90%】までに制限されます。
したがって、経費30,000ドルの90%=27,000ドルしか控除されません。
課税対象額は:
賞金30,000ドル − 控除される経費27,000ドル = 3,000ドル
つまり、
1ドルも勝っていないのに、「3,000ドル分の利益があった」とみなされて課税されてしまいます。
この「90%控除ルール」により、トントン収支でも課税が発生するケースが生まれ、大きな衝撃となっています。
日本人にも関係ある?
この法律そのものはアメリカ国内のプレイヤー向けで、日本人プレイヤーには直接関係はありません。
ただし、日本人がWSOPなどで賞金を獲得した場合にも、税金面で重要な注意点があります。
キーワードは「ITIN(アイティン)」です。
ITINがないと、賞金の30%がその場で天引きされる
ラスベガスのWSOPで賞金を獲得すると、アメリカでは源泉徴収という形で税金が即座に差し引かれます。
そして、ITIN(アメリカの納税者番号)がない人は、賞金の30%が税金として引かれた額を受け取ることになります。
たとえば:
- 賞金:30,000ドル
- 経費:28,000ドル
- 実際の利益:2,000ドル
賞金30,000×0.3=9,000ドル(=賞金の30%)が源泉徴収されてしまいます。手元に残るのは21,000ドルで、実際には21,000-28,000=-7,000、よって2,000ドル勝ったはずなのに7,000ドルもの大赤字になってしまいます。
ITINを取得すれば、満額受け取り&日本で納税できる
では、このITINはどうすれば取得できるのでしょうか?
ITIN(Individual Taxpayer Identification Number)を取得すれば、アメリカでの源泉徴収が免除され、賞金を満額受け取ることができます。その後、日本で自分で申告すればOKです。
日本での納税は「一時所得」なら超軽め
ポーカーの賞金は、日本では「一時所得」として扱われます。
その課税の仕組みは以下の通りです:
(賞金 − 経費 − 特別控除50万円)÷ 2 が課税対象
例:
- 賞金:30,000ドル(≒450万円)
- 経費:28,000ドル(≒420万円)
- 特別控除:50万円
→ (450 − 420 − 50)÷2 = マイナス30万円(=課税されない)
日本では利益が出なければ課税対象になりません。
もう少し違うパターンを計算してみましょう。経費を抑えて、大きく勝てた場合を考えます。
- 賞金:30,000ドル(≒450万円)
- 経費:10,000ドル(≒150万円)
- 特別控除:50万円
→ (450 − 150 − 50)÷2 = 125万円(≒9,000ドル)
アメリカでは賞金全体の30,000ドルに対し、税金が発生しますが、日本ではこれだけ大きく稼ぎを出していても、9,000ドルに対してのみ、課税されます。
日本で納税した方がずっとお得だということがわかりますね。
ITINはどうやって取る?
現地で申し出る
WSOPで賞金を受け取る際、ペイアウトカウンターにて「ITINを取得したい」と申し出ると、後日、申請用の書類を用意してもらえることがあります。
賞金が5,000ドル以上ある場合は対応してもらえる可能性が高いです。
郵送や代行もOK
アメリカの国税庁(IRS)にW-7という申請書とパスポートコピーを送ることで、自力でも取得可能です。
まとめ|5,000ドル以上勝ったら、真っ先にITINを取ろう
WSOPで賞金を受け取るとき、「ITINがあるかないか」で最終的な手取り額に大きな差が生まれます。
- ITINがないと、問答無用で賞金額から30%天引き
- ITINがあれば、満額受け取って、日本で納税
しかも、日本の「一時所得」ルールを使えば、わずかな納税で済むこともあります。
最後にひとこと
ポーカーで勝ったとき、意外と見落としがちなのが「税金」です。
でもちょっとした準備で、数十万円〜100万円以上の手取りの差が生まれることも。
ITINは、未来の自分を守る防具です。
WSOPで夢を掴む準備と一緒に、税金対策も忘れずに。賢く勝って、しっかり守ろう。未来の自分と賞金のために!
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