ポーカー世界最高峰の大会「WSOP(World Series of Poker)」。その勝者に贈られる“ブレスレットは1億円を超える価値があるとも言われている。
だが、その本当の価値は、「世界一の称号」を手にした証であること。WSOPで優勝すると、たとえメインイベントでなくともブレスレットが授与され、表彰式では国歌が流れる。
さらに、WSOPのブレスレットは、WSOP・WPT・EPTからなる“世界三大大会”の制覇を意味する「トリプルクラウン」の対象にもなっている。世界中のトッププレイヤーが目指す、ポーカー界最高の勲章だ。
それほどまでに、WSOPでの優勝は特別な意味を持つ。日本人でもこれまで10人がブレスレットを獲得しているが、2本以上獲得したプレイヤーはいまだ現れていない。
そんな栄光のブレスレットを最も多く手にしてきたプレイヤーは誰なのか──。本記事では、歴代トップ5の“ブレスレット王者”たちを紹介する。
第1位:フィル・ヘルミュース( Phil Hellmuth )|ダントツの17本、“ポーカー界の悪ガキ”

- ブレスレット獲得数:17本
- WSOP獲得賞金:$18,200,096(約27億円)
若き王者、メイン最年少優勝の衝撃

WSOP史上、もっとも多くブレスレットを手にしている男、それがフィル・ヘルミュース。
1989年、わずか24歳でWSOPメインイベントを制し、一躍時の人に。実はこの勝利、当時の最年少優勝記録でもあった。ここから、ヘルミュースの伝説は始まった。
WSOPEとのメイン二冠はヘルミュースただひとり

その後も勝ち続け、ブレスレットの数はついに17本に到達。
さらに2012年にはWSOPヨーロッパ(WSOPE)のメインイベントも制し、WSOPとWSOPEの“両メインイベント優勝”という唯一の記録も持っている。
“問題児”として愛され、今なお注目の的

ヘルミュースといえば、感情的な振る舞いとビッグマウスで知られるキャラクター。プレーでは理詰めで相手を追い詰める一方、負けると感情を爆発させる場面も多く、「ポーカー界の悪ガキ(Poker Brat)」とも呼ばれている。
賛否は分かれるが、誰もが知る“WSOPの主役”であることは間違いない。
そして2025年、長年出場を続けてきたWSOPメインイベントについて体力的に「もう無理だ」と語り、初めて不参加を表明。しかし、本当に出ないなんて、誰も本気で信じていない。それがフィル・ヘルミュースという男だ。
主なブレスレット獲得歴
- 1989年|WSOPメインイベント優勝(参加費$10,000 /賞金$755,000 約1.1億円)
- 2012年|WSOPEメインイベント優勝(参加費€10,540 /賞金€1,022,376 約1.6億円)
フィル・ヘルミュースのブレスレット一覧はこちら
年 | 種目(バイイン) | 優勝賞金 |
---|---|---|
1989 | Main Event – No-Limit Hold’em ($10,000) | $755,000 |
1992 | Limit Hold’em ($5,000) | $188,000 |
1993 | No-Limit Hold’em ($2,500) | $173,000 |
1993 | No-Limit Hold’em ($1,500) | $161,400 |
1993 | Limit Hold’em ($5,000) | $138,000 |
1997 | Pot-Limit Hold’em ($3,000) | $204,000 |
2001 | No-Limit Hold’em ($2,000) | $316,550 |
2003 | Limit Hold’em ($2,500) | $171,400 |
2003 | No-Limit Hold’em ($3,000) | $410,860 |
2006 | No-Limit Hold’em (Rebuy) ($1,000) | $631,863 |
2007 | No-Limit Hold’em ($1,500) | $637,254 |
2012 | Razz ($2,500) | $182,793 |
2012 | WSOPE Main Event – No-Limit Hold’em (€10,450) | €1,022,376 |
2015 | Razz Championship ($10,000) | $271,105 |
2018 | No-Limit Hold’em (30 min levels) ($5,000) | $485,082 |
2021 | No-Limit 2-7 Lowball Draw ($1,500) | $84,951 |
2023 | Super Turbo Bounty No-Limit Hold’em ($10,000) | $803,818 |
第2位:フィル・アイヴィー(Phil Ivey)|技術と記録で魅せる“静かなる天才”

- ブレスレット獲得数:11本
- WSOP獲得賞金:$11,060,065(約16億円)
ミックスゲームで築いた唯一の記録

“世界一のオールラウンドプレイヤー”と称されるフィル・アイヴィー。
そのすごさは、WSOPで獲得した11本のブレスレットがすべてホールデム以外の種目であること。
ミックスゲーム、ローゲーム、Studなど、多様な種目で勝ち続ける技術の高さが彼の最大の武器だ。
さらに、38歳で10個目のブレスレットを獲得し、当時の最年少記録を更新。
初優勝から10個目までにかかった年数も14年と、フィル・ヘルミュースの17年を上回るスピードだった。
超ハイステークスプロ
アイヴィーは、キャッシュゲームの世界でも“伝説”として知られる存在。
$25,000/$50,000のノーリミットヘッズアップで、テキサスの億万長者アンディ・ビールに3日間で1,600万ドル(24億円)勝利したエピソードは有名だ。
ベラージオのレートは$4,000/$8,000のハイレートミックスゲームキャッシュ卓「ビッグゲーム」の常連でバイインは億単位が当たり前。トーナメントでもキャッシュゲームでの勝負でも、その強さは際立っている。
アイヴィーの代わりに”伝説”になった男、クリス・マネーメーカー

アイヴィーのWSOPキャリアを語るうえで外せないのが、2003年のメインイベント。
この年、時の人となったのはクリス・マネーメーカー(Chris Moneymaker)だ。ポーカーネームではなく、本名だ。
当時の彼は普通の会計士だったが、$86のオンラインサテライトからWSOPメインの出場権を獲得し、初出場で優勝。賞金は$2,500,000(約4億円)にのぼった。
「誰でも世界一になれる」。
この現実がポーカー界に火をつけ、“マネーメーカーブーム”と呼ばれる歴史的なブームを巻き起こすことになる。
アイヴィー vs マネーメーカー、運命を分けた一戦
2003年WSOPメインイベント、10位で敗退したのがフィル・アイヴィーだった。
その敗退劇は今も語り継がれる“伝説のクーラーハンド”。
- マネーメーカー:A♥ Q♦
- アイヴィー:9♠ 9♥
- フロップ:Q♠ Q♥ 6♠(マネーメーカー、トリップス)
- ターン:9♣(アイヴィー、フルハウス)
- オールイン後、リバー:A♠(マネーメーカー、上のフルハウス完成)
フルハウス over フルハウス。
もしこのリバーが別のカードだったら、2003年の主役はクリスではなくフィルだったかもしれない。
もちろん、その後もアイヴィーはブレスレットを積み重ね、誰もが認めるレジェンドになった。
だがこの一戦は、“もしも”を感じさせる静かなる名場面として、今も語り継がれている。
主なブレスレット獲得歴
- 2005年|Pot-Limit Omaha (参加費$5,000 / 賞金$635,603 約9,000万円)
- 2024年|Limit 2-7 Triple Draw Championship (参加費$10,000/ $347,440 約5,000万円)
フィル・アイヴィーのブレスレット一覧はこちら
年 | 種目(バイイン) | 優勝賞金 |
---|---|---|
2000 | Pot-Limit Omaha ($2,500) | $195,000 |
2002 | Limit Seven Card Stud ($1,500) | $132,000 |
2002 | Limit Seven Card Stud Hi-Lo ($2,500) | $118,440 |
2002 | Limit S.H.O.E. ($2,000) | $107,540 |
2005 | Pot-Limit Omaha ($5,000) | $635,603 |
2009 | No-Limit 2-7 Lowball Draw ($2,500) | $96,367 |
2009 | Omaha/Seven Card Stud Hi-Lo 8 or Better ($2,500) | $220,538 |
2010 | H.O.R.S.E. ($3,000) | $329,840 |
2013 | Mixed Event (8-Game) (A$2,200) | A$51,840 |
2014 | 8-Game Mix ($1,500) | $166,986 |
2024 | Limit 2-7 Triple Draw Championship (6-Handed) ($10,000) | $347,440 |
なんと3位は3人です!一気にご紹介いたします!
3位:エリック・サイデル(Erik Seidel)|進化を止めないレジェンド

- ブレスレット獲得数:10本(歴代3位タイ)
- WSOP獲得賞金:$9,915,926(約14.8億円)
- 入賞回数:163回
長きキャリアを誇る“トーナメントの帝王”
現在65歳(1959年生まれ)、今なお現役で第一線に立つレジェンドプレイヤー。
サイデルは元々、プロのバックギャモンプレイヤーとして活動し、一時はアメリカ証券取引所でトレーダーを務めていた。
ポーカーへの本格転向後は、キャッシュゲームからスタートしたが、
やがてトーナメントでその実力を証明し、現在ではトーナメントのスペシャリストとして名高い存在となった。
“静かなる準優勝”から始まった伝説

その名が世界に知れ渡ったのは、1988年のWSOPメインイベント。ファイナルテーブルでジョニー・チャンと一騎打ちになり、準優勝に輝いた。
この時の最終ハンドは、後に公開された映画『ラウンダーズ』(1998年)で再現され、サイデルの存在は“知る人ぞ知る伝説”から、“スクリーンの中のレジェンド”へと昇華された。
今も進化を止めない“本物のプロ”

サイデルのキャリアは40年にわたるが、驚くべきはその“現在進行形”ぶり。2023年には、WSOPパラダイスの$50,000スーパーハイローラーで優勝し、自身10個目のブレスレットを獲得。高額バイインの舞台でも、若手トッププロたちと堂々と渡り合っている。
また、カードやチップの扱いの美しさも、プロたちが一目置くレベル。
ただ勝つだけではなく、プレイスタイルそのものが尊敬を集める“静かなる帝王”である。
主なブレスレット獲得歴
- 2023年|Super High Roller No-Limit Hold’em (参加費$50,000 /賞金 $1,704,400 約2.5億円)
- 2005年|No-Limit Hold’em (参加費$2,000/ 賞金$611,795 約9,000万円)
エリック・サイデルのブレスレット一覧はこちら
年 | 種目(バイイン) | 優勝賞金 |
---|---|---|
1992 | Limit Hold’em ($2,500) | $168,000 |
1993 | Limit Omaha Hi-Lo ($2,500) | $94,000 |
1994 | Limit Hold’em ($5,000) | $210,000 |
1998 | No-Limit 2-7 Lowball Draw ($5,000) | $132,750 |
2001 | No-Limit Hold’em ($3,000) | $411,300 |
2003 | Pot-Limit Omaha (Rebuy) ($1,500) | $146,100 |
2005 | No-Limit Hold’em ($2,000) | $611,795 |
2007 | No-Limit 2-7 Lowball Draw Championship (Rebuy) ($5,000) | $538,835 |
2021 | Super MILLION$ High Roller NLH (Online, $10,000) | $977,842 |
2023 | Super High Roller No-Limit Hold’em ($50,000) | $1,704,400 |
3位:ジョニー・チャン(Johnny Chan)|“3連覇未遂”の伝説

- ブレスレット獲得数:10本(歴代3位タイ)
- WSOP獲得賞金:$4,728,620(約7億円)
- 入賞回数:55回
原点は16歳のラスベガス

1957年生まれのジョニー・チャンは、中国・広州で生まれ、幼い頃に香港を経てアメリカへと移住。最終的には、家族がレストランを営むテキサス州ヒューストンで暮らすようになった。
彼が初めてラスベガスを訪れたのは、わずか16歳のとき。彼はクレジットカードで200ドルを借り、金のネックレスを質に入れて120ドルを調達。わずか1週間で、320ドルを3万ドルに増やしたという逸話が残っている。
特に印象的なのが、テーブルに“オレンジ”を置くという独特のルーティン。禁煙を決意して以降、カジノのタバコの煙を避けるために持ち込むようになったそれは、やがて集中を高める“おまじない”として定着し、ファンにとってはチャンの象徴となった。
メインイベント連覇という偉業
ジョニー・チャンは、1987年・1988年のWSOPメインイベントを連覇。
特に1988年の決勝では、最後のハンドで見事なトラップを決めて勝利。その瞬間は、のちに映画『ラウンダーズ』でも再現され、“スクリーンを超えた伝説”として語り継がれている。
“3連覇”を阻んだのは、若きフィル・ヘルミュース

1989年、チャンは前人未到の3連覇を目指してWSOPに挑む。最終ヘッズアップで対峙したのは、当時24歳の新星フィル・ヘルミュースだった。結果は、若きヘルミュースの勝利。惜しくも3連覇はならなかった。
驚異の記録「3年連続ヘッズアップ進出」
「3年連続でメインイベントのヘッズアップに進んだ」プレイヤーは、今もなおチャンただ一人。メインイベント2連勝の翌年に準優勝という圧倒的な成績は、WSOP史上に残る伝説であり、この記録が破られる可能性は、限りなく低いと言われている。
主なブレスレット獲得歴
- 1987年|WSOPメインイベント優勝(参加費$10,000 /賞金 $625,000 約9,000万円)
- 1988年|WSOPメインイベント優勝(参加費$10,000 / 賞金 $700,000 約1億円)
ジョニー・チャンのブレスレット一覧はこちら
年 | 種目(バイイン) | 優勝賞金 |
---|---|---|
1985 | Limit Hold’em ($1,000) | $171,000 |
1987 | No-Limit Hold’em MAIN EVENT ($10,000) | $625,000 |
1988 | No-Limit Hold’em MAIN EVENT ($10,000) | $700,000 |
1994 | Limit Seven Card Stud ($1,500) | $135,600 |
1997 | No-Limit 2-7 Draw Lowball ($5,000) | $164,250 |
2000 | Pot-Limit Omaha ($1,500) | $179,400 |
2002 | Heads Up No-Limit Hold’em ($2,500) | $34,000 |
2003 | No-Limit Hold’em ($5,000) | $224,400 |
2003 | Pot-Limit Omaha ($5,000) | $158,100 |
2005 | Pot-Limit Hold’em ($2,500) | $303,025 |
3位:ドイル・ブランソン(Doyle Brunson)|“テキサス・ドリー”、ゴッドファーザー

- ブレスレット獲得数:10本(歴代3位タイ)
- WSOP獲得賞金:$3,038,079(約4.5億円)
- 入賞回数:37回
- 生年:1933年8月10日 ー 没年:2023年5月14日(享年89)
NBAを夢見た少年が、伝説のプレイヤーに

ドイル・ブランソンは1933年、テキサス州ロングワースに生まれた。学生時代はバスケットボールのスター選手で、NBAのミネアポリス・レイカーズから声がかかるほどの逸材だった。しかし、膝の大怪我によりプロ入りの夢は絶たれた。
その後、セールスマンとして働き始めた初日に参加したポーカーゲームで1か月分の給料を稼いでしまう。この経験がきっかけとなり、プロのポーカープレイヤーとしての道を歩み始めた。
WSOPメインイベントを連覇した伝説
1976年と1977年、ブランソンはWSOPメインイベントを2年連続で優勝。この偉業はごく一部のプレイヤーしか成し遂げていない。
しかも両年とも、「10-2」のハンドで優勝したことから、このハンドは今も「ドイル・ブランソンハンド」として知られている。
WSOPもWPTも制した先駆者

ブランソンは、WSOPメインイベントとワールドポーカーツアー(WPT)の両方で優勝した、史上初のプレイヤーでもある。この記録を持つのは、WSOP史においてもごくわずかなトッププレイヤーのみだ。
子どもたちに繋ぐバトン

2018年、ブランソンはトーナメントからの引退を発表。最後に出場したのは、WSOPの2-7シングルドロー($10,000)
決勝まで勝ち進み、6位でフィニッシュ。賞金は43,963ドルだった。
WSOPでのキャリアは、ブレスレット10本、入賞37回。最後まで第一線で戦い続けた。
息子のトッド・ブランソンは2005年にブレスレットを獲得し、WSOPでタイトルを獲得した“初の親子”となった。
娘のパメラ・ブランソンもトーナメントに出場しており、2人とも現在もプロとして活動している。

ブランソンが歩んだ道は、いまも家族の中で生き続けている。
最後まで“最高のゲーム”に立ち続けた男
引退後もブランソンは、ベラージオの「ボビーズルーム」で開催される$4,000/$8,000のリミットミックスゲームといったハイステークスの舞台に現れ続けた。
プロ生活は70年近く。誰よりも長く、誰よりも真剣にポーカーと向き合ってきた男だった。
主なブレスレット獲得歴
- 1976年|WSOPメインイベント優勝(参加費$10,000 /賞金 $220,000 約3,000万円)
- 1977年|WSOPメインイベント優勝(参加費$10,000 /賞金 $340,000 約5,000万円)
ドイル・ブランソンのブレスレット一覧はこちら
年 | 種目(バイイン) | 優勝賞金 |
---|---|---|
1976 | No-Limit 2-7 Draw Lowball ($5,000) | $90,250 |
1976 | No-Limit Hold’em MAIN EVENT ($10,000) | $220,000 |
1977 | Limit Seven Card Stud Hi-Lo ($10,000) | $52,500 |
1977 | No-Limit Hold’em MAIN EVENT ($10,000) | $340,000 |
1978 | Limit Seven Card Stud ($5,000) | $69,000 |
1979 | Mixed Doubles Seven Card Stud ($600) | $4,500 |
1991 | No-Limit Hold’em ($2,500) | $208,000 |
1998 | Limit Razz ($1,500) | $93,000 |
2003 | Limit H.O.R.S.E. ($2,000) | $84,080 |
2005 | No-Limit Hold’em 6-Handed ($5,000) | $367,800 |
まとめ:受け継がれていく“伝説”と、これからの一歩
WSOPの歴史を築いてきたプレイヤーたちの物語は、今もなお、世界中のテーブルで語り継がれています。
“神話のような記録”は、もしかしたらこれからも破られないままかもしれません。それでも、新しい物語は、いつだってここから始まります。
もし、あなたが一歩踏み出すなら
WSOPという舞台は憧れであり、目指す場所。最初のステップとしては遠く感じるかもしれません。
そんなときは、まずは気軽に遊べるアミューズメントポーカースポットや、日本国内の大会「JOPT」などに足を運んでみてください。
誰もが最初は初心者。あなたのポーカーストーリーも、ここから描き始めましょう。
